ティーチングにもコツがある|部下が「できる」ようになる5stepティーチングとは?

「教えてもできるようにならない」原因は、教えるゴールを「伝えること」に置いていることです。

ゴールを「相手ができるようになること」に置き直し、説明→やってみせる→やらせる→フィードバック→振り返りの5ステップまで回すと、育成効果が変わります。

「何度ポイントを伝えても、できるようにならない」。管理職の方から、最もよく聞く悩みのひとつです。上司はストレスを抱え、部下は自信をなくしていきます。

ただ、その原因は部下の能力や素直さではないことがほとんどです。「伝えればできるようになる」という前提そのものに原因があります。

この記事で分かることは次の3つです。

  • 教えてもできるようにならない、3つの原因
  • 「できる」まで導くティーチングの5ステップと、現場での使い方
  • ティーチングとコーチングを、どの場面で使い分けるか

そもそもティーチングとは?コーチングとどう違うのか

ティーチングとは、答えややり方を示して相手に習得させる指導方法です。一方でコーチングは、問いかけによって本人から答えを引き出す関わり方を指します。

両者は優劣ではなく、使う場面が違います。

ティーチングコーチング
やることやり方を示し、習得させる問いかけ、本人に考えさせる
効果基本が身につき、成功体験を積める自発性と創意工夫が生まれる
弊害部下が受け身になりやすい答えの質にばらつきが出る
向く場面習熟度が低い/初めての業務ある程度できるようになった後
要点:近年はコーチングが重視されがちですが、土台がない相手に問いかけても、引き出せる中身がありません。習熟度が浅いうちは、まずティーチングです。

同じ部下でも、業務によって習熟度は違います。「この人はベテランだから任せる」ではなく、「この仕事について、今どの段階か」で判断してください。ベテランでも初めての業務なら、指示型から始めるのが正解です。

なぜ「教えても部下ができるようにならない」のか

大きな原因は「口で説明すればわかるだろう」という思い込みです

「口頭で説明すればわかるだろう」「一度伝えればできるようになるだろう」「わからなければ聞きにくるだろう」。こういった思い込みがティーチングを停滞させます。
教えた側は「なぜ教えたのにできるようにならないんだ!」となり、教わる側は「一度口で説明されただけじゃわからない。なぜもっとちゃんと教えてくれないんだ!」と不満を抱くというすれ違いを生みます。

どう教えれば「できる」ようになるのか

教え方の型として、山本五十六の言葉がよく知られています。

やってみせ、言って聞かせ、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ

これを実務の手順に落としたものが、次の5ステップです。

ステップ1:説明する

5W1Hで、やり方を具体的に説明します。このとき「なぜそうするのか」も添えてください。理由が分かっていないと、少し状況が変わっただけで応用が効かなくなります。

ステップ2:やってみせる

上司が実際にやって見せます。言葉だけで再現できる人はほとんどいません。ここを飛ばすと、部下は「分かったつもり」のまま実践に入ります。

ステップ3:やらせる

その場で実際にやってもらいます。「次の機会にやってみて」ではなく、できればその場です。時間が空くほど、教わった内容は薄れていきます。

ステップ4:フィードバックする

できていた点と、次に直す点を具体的に返します。「よかったよ」だけでは、何を再現すればよいか分かりません。「結論と理由は分かりやすかった。事実が出にくかったので、そこを厚くしよう」のように、行動のレベルまで落とします。

ステップ5:振り返らせる

最後に「やってみて、どんな気づきがあった?」と本人に言語化させます。ここで初めて、教わったことが本人の言葉になります。

さらに効かせたいときは、問いをこう変えてください。「後輩にこれを教えるとしたら、どのポイントを伝える?」人に教える前提で振り返ると、定着が一段上がります。

要点:5ステップは、1回で順番どおりに回し切る必要はありません。戻ったり繰り返したりしながら、相手が「できる」ようになるまで関わることが目的です。
ティーチング5ステップの2×2マトリクス

この5つは、インプットとアウトプット、説明と実践の組み合わせで整理できます。①から④を回し、その全体を⑤の振り返りで俯瞰する形です。

実際の会話例(3つのケース)

使い方のイメージがつくよう、3つの場面で会話例を挙げます。

ケース① 分かりやすい報告の仕方を教える

  • ① 説明:「報告をするときは、まず結論を伝えて、その結論に至る理由と、具体的な事実を伝えるといいよ」
  • ② やってみせる:「実際に私がやってみるね。お伝えしたい結論はこうです。理由はこうで、具体的に現場でこういうことが起きています」
  • ③ やらせる:「では実際にやってみようか。さっき伝えてくれた報告を、この順番でやってみてもらっていいかな」
  • ④ フィードバック:「結論と理由まではとても分かりやすくてよかったよ。具体的な事実がなかなか出てこなかったから、今後は事実をもとに考える習慣をつけられるといいね」
  • ⑤ 振り返り:「一度やってみて、どんな気づきがあった?」

ケース② プレゼン資料の作り方を教える

  • ① 説明:「プレゼン資料は、1つのスライドにたくさんの情報を詰め込まずに、『1スライド1メッセージ』を意識すると伝わりやすくなるよ」
  • ② やってみせる:「これが実際に、それを意識して作られた資料だよ。こんなふうにメッセージを強調するんだ」
  • ③ やらせる:「では、あなたが作ってくれた資料をこれを意識して書き直してみようか。まずは最初の3ページを修正して持ってきて」
  • ④ フィードバック:「この2枚のスライドはとてもいいね。このスライドは、もっとメッセージをシンプルにするとさらによくなるよ」
  • ⑤ 振り返り:「まずここまでやってみて、どんな気づきがあった?」

ケース③ 商談での深掘り質問の仕方を教える

  • ① 説明:「商談でお客様から『検討します』とはぐらかされないためには、『いかがですか』ではなく、具体的な選択肢を出して質問するといいよ」
  • ② やってみせる:「実際に私がデモをやってみるので、お客様役をやってもらっていいかな」
  • ③ やらせる:「じゃあ逆に、私がお客様役をやるので、営業役をやってみようか」
  • ④ フィードバック:「最初の質問はよかったよ。次のお客様のセリフに対しても、具体的な選択肢を出して質問できるといいね」
  • ⑤ 振り返り:「今までのやり取りを振り返って、どんな気づきがあった?」

いかがでしょうか。おそらく多くの方が、「①の説明だけして終わり」になってしまっているのではないでしょうか。

研修や対面以外の場面でも使えるのか

使えます。1対1の指導だけでなく、研修にも、対面以外の指導にも、同じ5ステップが当てはまります。

研修に応用する場合

私は営業スキルやコミュニケーションスキルの研修を数多く行っていますが、その場でも必ずこのステップを踏んでいます。たとえばコーチングを教える場合は、次の流れです。

  1. コーチングの考え方とステップを教える
  2. 講師がコーチ役となり、デモを見せる
  3. 受講生同士で相互コーチングをしてもらう
  4. その実践にフィードバックする(人数が多い場合は受講生同士で相互フィードバック)
  5. 実践して得た気づきや学びを言語化し、共有し合う

対面以外で教える場合

たとえば「システム上の作業を、マニュアルを見て実践してもらう」場面なら、こう組み立てられます。

  1. 手順を書いたマニュアルを作成する
  2. 実際にその作業をしている画面を録画し、マニュアルとあわせて渡す
  3. やってもらい、分からない部分を録画または画面キャプチャで送ってもらう
  4. 相談された部分へのフィードバックを、音声データで送る
  5. やってみての気づきや感想を送ってもらう

これまで「対面で説明しないと伝わりにくい」と思われていた作業も、画面録画と音声データを使えば、効果的に教えられます。教える側と教わる側の時間を合わせなくてよくなるため、忙しいチームほど効果があります。

よくある失敗は?

失敗1:説明を繰り返すのみ

伝わらないとき、多くの上司はもう一度説明します。前回より丁寧に、強く。しかし、相手ができないのは説明が足りないからではなく、「理解を実践に落とし込めていないから」です。説明回数を増やすのではなく、ステップを先に進めてください。

失敗2:やらせるのを「次の機会」に先送りする

説明した後、「じゃあ次やるときは試してみてね」と終わらせてしまうパターンです。時間がないときほど起きます。

ただ、教わった内容は数日で薄れます。次の機会が来た頃には、上司が伝えたかった勘どころは残っていません。結果、また最初から説明することになり、かえって時間がかかります。

やってみせる・やらせるは、その場でやるのが原則です。5分でかまいません。「今この場で1回だけやってみようか」をやるどうかで、定着は変わります。

失敗3:振り返りを上司がまとめてしまう

実践させた後に、「今のはここがよかったね、次はこうしよう」と上司が総括して終わるパターンです。一見、丁寧な指導に見えます。

しかし、学びを言葉にするのは本人の仕事です。上司がまとめてしまうと、部下にとっては「指摘された記憶」しか残りません。自分の言葉になっていないので、次の場面で応用できません。

フィードバックを伝えたら、最後は必ず「やってみて、どんな気づきがあった?」と本人に返してください。ここをやらせるかかどうかが、ステップ④と⑤の分岐点であり、定着効果を左右します。

まとめ

  • 教えるゴールは「伝えること」ではなく「できるようになること」
  • 説明・やってみせる・やらせる・フィードバック・振り返りの5ステップまで回す
  • 習熟度が浅いうちはティーチング。業務ごとに段階を見て、コーチングに移す
  • 教える時間がないときは、費用対効果で割り切るか、期間を区切って集中的に教える

▼ ティーチング・セルフチェックリスト

  • ・「教える」のゴールを「できるようになること」に置けているか
  • ・説明だけで終わらず、やって見せる→やらせる、まで進んでいるか
  • ・実践に対して、行動レベルのフィードバックを返しているか
  • ・最後に本人へ「気づき」を言語化させているか
  • ・業務ごとに、ティーチングとコーチングを使い分けられているか

「いいえ」が多いほど、説明で終わっているサインです。

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