「自走社員」を育てるポイント | 若手研修レポート

若手の生産性を高める出発点は、「効率化のノウハウ」ではなく「効率化で空いた時間に何をするか」を決めることです。

そのうえでゴールを決め、段取り・人の巻き込み・AIの活用を自分の頭で考えて回せることが、自律的に働く若手の条件です。

弊社はマネージャー支援が中心ですが、先日、久しぶりにある組織の「2年目職員研修」を担当しました。テーマは、自律的に動き、自ら生産性を高められる力を身につけることです。

1年目で仕事を一周した2年目こそ、ただ繰り返すのではなく「どうすればもっと効率的にできるか」を自分で考える段階です。本記事では、その研修でお伝えした内容をレポートとして共有します。

この記事で分かること

  • 業務効率化を「何から」始めればよいか
  • 段取り力の定義と、GPDCAでゴールから逆算する方法
  • 生産性を上げる7つの実践Tipsと、人を気持ちよく巻き込む伝え方

研修の位置付け

マネージャー研修が多い中で、あえて若手へ

普段、私が担当するのはマネージャー層の研修が中心です。そんな中、今回は久しぶりに2年目職員の研修を担当しました。

1年目でひととおり仕事を経験し、大枠をつかんだ2年目。ここで求められるのは、同じ一周をただ繰り返すのではなく、「どうすればもっと効率的にできるか」を自分で考えて動くことです。

現場をエンゲージメント、モチベートするマネージャーの力量ももちろん重要ですが、現場が自ら考え、主体的に動く力も当然ながら重要です。この両輪で組織は強くなっていきます。

ゴールは「自律的に動き、生産性を高める力」

研修の目的は明確でした。自律的に動き、自ら生産性を高められる力を身につけることです。忙しい日々の中で時間を有効に使い、困難な業務も担えるようになる。その土台をつくる一日です。以下、実際にお伝えした内容を順にレポートします。

業務効率化は何から始めればよいか?

要点:効率化の出発点は、ノウハウを覚えることではなく「空いた時間で何をするか」を決めることです。

早く終わらせるために働いているわけではない

業務効率化のノウハウ提供を多くのビジネスパーソンに行ってきましたが、一番最初にやるべきは「捻出した時間を、何に使うか」を決めることです。

私たちは、早く終わらせるために働いているわけではありません。大事なのは、効率化して空いた時間で“何をするか”です。この問いに対する答えを持っているかどうかで、ノウハウを活用するかどうかが決まります。

そのため、まずは自分の仕事の目的を明確にし、その価値をどう高めるかを考えます。そのうえで「時間が捻出できたら何をしたいか」を具体的に書き出します。これが見えると、「そのために時間を作らないと」という効率化への意欲が自然にわいてきます。

目的が明確だと、効率化への意欲が生まれる

私自身が働き方を本気で見直したのは、子どもが生まれたときです。早くから独立し、基本的に仕事が好きなので、24時間仕事もプライベートも区別しない状況で過ごしていました。

しかし、子どもができると分かったときにライフスタイルを変えようと決意し、「土日と18時以降は基本的に働かない」と決めました。働ける時間は3分の2以下になりましたが、仕事でもやりたいことはたくさんあったので、「何をして、何をしないか」「もっと効率的にやれる方法はないか」を真剣に考えました。

結果として、労働時間は減りながらも売上は2倍になり、幸福度も上がりました。明確な目的があるからこそ、工夫が生まれるのだと実感しています。

段取り力とは何か?

段取り力(効率化)とは、決められたゴールに、最短経路で到達する方法のことです。研修ではこう定義しました。

一歩目は「ゴールを決める」こと

この定義から導かれる一歩目は、当然「ゴールを決める」ことです。「この仕事は何のためで、いつまでに、何がどうなれば終わりか」が曖昧なままでは、最短経路も何もありません。

たとえば「懇親会の幹事をよろしく」と言われて、すぐお店を押さえるのは危険です。懇親会一つとっても、「何を目的として開催するか」「どうなったら成功か」を定義してから進めないと、本来それによって変わるはずのお店の条件が決まりません。まずはゴール設定です。

目的・目標・手段を分け、GPDCAで回す

ゴールを決めたら、そこへ向けてPDCAを回します。段取りでは、PDCA(計画→実行→評価→改善)の前にG(ゴール)を置いた「GPDCA」で考えるのがポイントです。

段取りの基本サイクル「GPDCA」

Gゴール目的・目標・作業範囲を決める
P計画最短経路を考え、行動に分解する
D実行分解した行動を時間にはめ込む
C評価予定と実績のずれを確かめる
A改善次の段取りに活かす

そのゴール設定でつまずく最大の原因が、目的・目標・手段の混同です。

区分意味例
目的何のためにやるか(抽象的)残業を減らす
目標達成状態を測れる形にしたもの残業を週5時間削減
手段目標達成のためにやること1日の業務を可視化する

「残業を減らしたい」と思っているうちは減りません。「週5時間=1日1時間」と決めた瞬間、「その1時間をどう削るか」と具体的に思考が動き出します。

加えてゴールは、目的・目標・作業範囲(どこまでやれば終わりか)の3点で握ると、依頼者との認識のずれを防げます。

生産性を高めるには何をすればよいか?

ここからは、日々の仕事にすぐ使える具体的な工夫を7つ紹介します。

早期に着手する

未知の仕事を未知のまま置いておかないことです。終わらせなくていいので、少し手をつけてみる。そうすると「思ったより時間がかかる」「事前承認が要る」と早く気づけます。

「やることリスト」と「したことリスト」を持つ

ToDo(やることリスト)に加え、「したことリスト」を残すと効果的です。やった作業(特に突発業務)を記録すると、「この時期にこれが起きやすい」という傾向が見え、翌年の自分や引き継ぎへの申し送りになります。

突発業務に取られる時間も把握でき、見立ての精度が上がります。

手元に抱えない(脱・属人化とマニュアル化)

仕事は自分の手元だけに置かず、クラウドで共有します。休んでも他の人が対応でき、自分を守ることにもなります。

さらにマニュアル化は特に効きます。人に教えるつもりで手順を言葉にすると、作る過程で自分の理解も深まります。

時間ではなく「行動」を管理する

「タイムマネジメント=時間管理」と訳しますが、時間は管理できません。勝手に過ぎるからです。管理できるのは行動です。

流れる時間に「この15分でこれ」と行動をはめ込みます。そのためには、行動を可視化して分解しておくことが重要です。

時間の「感度」を上げる

時間を細かく認識するほど、時間の感度は上がります。私は一番ストイックにやっていたときは、5分単位で自分の時間を記録していました。

そうすると1時間が12コマと認識できるようになり、5分、10分の隙間時間で仕事をどんどん処理できます。1時間単位で時間を管理している人とは、生産性がまったく異なります。

またデスクワークが続くときは、60分を1コマにし、最初の5分で計画・50分作業・最後の5分で振り返る、ということもやっています。

業務の性格で分ける(処理・考察・拘束)

仕事は性格で分けて段取ると進めやすくなります。

業務の性格例段取りのポイント
処理業務入力など、考えずにやれる作業スピードと予実管理
考察業務企画など、考える作業分解して短い時間でも進める

考察業務は「まとまった時間がないとできない」と思いがちです。しかし、企画の前段階の情報収集→収集した情報の分析→企画書の骨子づくり、のように分解すれば、短い時間でも進めることができます。

課題は「自責」で捉える

人が足りない。電話が多くて思考が途切れる。

研修内で多く出た課題です。しかし、こうした外部環境を課題と置いた瞬間に、自分にできることはなくなるため思考が止まります。

そうではなく「人が足りない中でどう回すか」「電話が多い環境でどう効率的に仕事をするか」と、自責の問いに変えた瞬間にさまざまなアイデアが出てきます。

たとえば「電話が多い時間帯は処理業務に回す」「本当に集中したい業務があるときは、2時間を上限に個室を予約してこもってよい」など、やりようはあるはずです。変えられないことにエネルギーを使うのはもったいないので、変えられることにエネルギーを集中させましょう。

人を気持ちよく巻き込むにはどうすればよいか?

要点:コミュニケーションスキルの本質は「相手の負荷を下げること」です。

成果を高めるには、人を巻き込むしかない

どれだけ段取りがよくても、一人でできる仕事には限界があります。高い成果を出すには、必要な人を巻き込むことが不可欠です。

ただし、周りも忙しい。だからこそ問われるのが、「いかに気持ちよく巻き込むか」です。

スキルの本質は「相手の負荷を下げる」こと

よく言われる伝え方のコツは、突き詰めればすべて相手の負荷を下げるためのものです。

  • 結論から伝える(何分の話か、どこへ向かうかが分かる)
  • 主観でなく客観的事実を伝える(判断材料になる)
  • 丸投げ相談をしない(「A案・B案、私はこう考えます」まで整理する)

上司が動いてくれないときは?

上司に提言したのに、動いてくれない。

若手からよく聞く声です。しかし、上司はさまざまな情報の中から優先順位の高いものを意思決定して動いています。

本当に動いてほしい案件があるなら、そうした上司の状況を踏まえて、優先順位を上げてもらうための工夫をする(根拠を示す、効果を示す、実態を伝えるなど)必要があります。

AI時代に思考停止しないためにはどうするか?

要点:AIは大いに使い、成果物の最終責任は自分が持つことです。

まずはAIを大いに活用する

AIは、議事録・文章作成・情報収集・データ解析まで、生産性を大きく引き上げます。使える場面ではどんどん活用し、AIを味方につける。これは大前提です。

成果物の最終責任者は、自分である

ただし、絶対に外してはいけない一線があります。成果物の最終責任者は、自分であるということです。「なぜこう書いたか」を聞かれて「AIが出したので分かりません」は通用しません。それっぽい文章をそのまま出すのは危険です。

便利さに甘えると思考力は落ちます。AIに“使われて”思考停止するのか、AIを“使いこなす”のか。むしろAI時代は、最終的に意思決定し、成果物に責任を持つ「自分の頭で考える力」がより強く求められます。ここを磨くことこそ、2年目からの生産性向上の核心です。

まとめ

  • 効率化の出発点は「空いた時間で何をするか」を決めること
  • 段取り力とは、決められたゴールに最短経路で到達する方法。目的・目標・作業範囲を決め、GPDCAで回す
  • 時間ではなく行動を管理し、課題は自責の問いに変える
  • 人を巻き込むときは相手の負荷を下げ、AIの成果物には自分が責任を持つ

自律的に働くためのセルフチェック

  • 「時間ができたら何をするか」を言葉にできているか
  • 仕事に取りかかる前に「ゴール(目的・目標・作業範囲)」を確認しているか
  • 長い仕事を「小さな期限」に分解できているか
  • データを共有し、属人化を避けられているか
  • 相手の「負荷を下げる」伝え方(結論から・事実・A案B案)ができているか
  • AIの成果物に、自分で責任を持てているか

「No」が多いほど、日々の忙しさを“自律”で減らせる余地があります。

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