9ヶ月で激変 次世代リーダー育成の実践記

既存業務では優秀なのに、新しいことには踏み出せない。この壁は、座学ではなく「実践経験」を通じてこそ越えられます。

管理職一歩手前の社員16名を9ヶ月間ご支援し、最終発表では社長が事業化を本気で議論するほどの企画が生まれ、研修前後のアセスメントでは全員のリーダーシップ能力が向上した事例をご紹介します。

この記事で分かること

  • 「優秀な実務家」が変革に踏み出せない理由
  • 新規事業立案を通じてリーダーシップを獲得する、9ヶ月のプログラム設計
  • 最終発表の場で起きたことと、受講生本人に起きた変化

ご支援を始めた経緯

ご支援したのは、旅行関連企業の次世代リーダー育成プログラムです。対象は、管理職の一歩手前にいる社員16名でした。

このプログラムの背景には、明確な問題意識がありました。

  • 既存業務に最適化された、優秀ゆえの壁。 対象の社員たちは、既存の業務を回すには非常に優秀です。しかし最適化されているがゆえに、「変化を起こす」「チャレンジする」「新しいことをやってみる」力が弱かった
  • 業界の変化は待ったなし。 業界が大きく変わっていく中で、会社の変革を担う人材が不可欠だった

「優秀な実務家」を「変革の担い手」へ。この転換を9ヶ月で起こすことが、プロジェクトの狙いでした。掲げたゴールは次のとおりです。

掲げたゴール:創造力と変化により、かけがえのない旅の価値を生み出す、顧客の最良のパートナー。この未来を牽引するリーダーシップを獲得する。

なぜ座学の研修ではなかったのか?

決められた仕事を高精度で回す力と、正解のない未来を切り拓く力は、まったくの別物です。後者は、知識をインプットするだけでは身につきません。

そこでこのプログラムでは、「新規事業の立案」という実践を通じてリーダーシップを獲得する設計にしました。

前提に置いたのは、リーダーシップは能力であり、獲得できるということです。本プログラムでいうリーダーシップとは、既存の延長を超え、理想の未来を描き、他者に働きかけて牽引する力のことです。この力を、実際の挑戦の中で習得していきました。

9ヶ月はどう進んだのか?

9ヶ月は、足腰を鍛えるインプット期と、リーダーシップを発揮するアウトプット期に分かれます。受講生16名は4名×4チームに分かれ、チームで一つの事業を磨き上げるプロジェクトワークとして進めました。

9ヶ月のプログラムの流れ

9ヶ月のプログラム全体像。インプット期:Day1 導入・理想と現状理解(リーダーシップ概論、理想と現状のギャップ、変革ビジョンの策定)、Day2〜4 組織理解・市場理解・企画方針の立案(7S、PEST、3C、SWOT、クリティカルシンキング、アサーション、企画の方針決定)、1on1(自身の現状と変化の障壁の言語化、障壁を越えるためのアクションプラン)。アウトプット期:Day5〜7 プロジェクトワーク(リーンキャンバス、MVP、チームビルディング、フィールドワーク、ビジョニング、フィードバック)、Day8 プレゼン・総括(役員プレゼン、学びの棚卸しとアクションプラン)
期間狙い中身
前半:インプット期足腰を鍛えるリーダーシップ概論、現状理解、組織・市場の分析を通じて思考の土台をつくる
後半:アウトプット期リーダーシップを発揮するチームで新規事業を立案し、フィールドワークとブラッシュアップを重ねて最終発表へ

前半:どうやって「勝ち筋」を描いたのか?

新規事業は、思いつきのアイデアからは生まれません。まず、自社と市場を徹底的に把握するところから始めました。

フレーム見るもの
7S分析社内(内部環境)
PEST分析社外(外部環境)
クロスSWOT内と外を掛け合わせた、自社の「勝ち筋のストーリー」

そのうえで「誰に・何を・どのように」というフレームで、各自が事業案を持ち寄りました。評価とメンバーの熱量をもとに、チームで筋のいい一案を選び抜きます。

後半:どうやって企画を「本物」にしたのか?

1on1で、事業を「自分ごと」にする

研修の半ばで、一人ひとりと1on1を行いました。実践フェーズに入る前に、当事者意識を高めるためです。

そこで本人にイメージしてもらったのは、2つの未来です。

  • 理想を達成したときに見たい未来
  • 変われないことで避けたい未来

机上の完璧なプランより、小さな先行事例

実践フェーズで徹底したのは、机上で完璧なプランを作り込むのではなく、「小さな先行事例」をつくるという発想です。

  • ターゲットに直接話を聞く
  • 「買いたい」と言ってもらう
  • 関係者に「これならやれそう」と言ってもらう

フィールドワークで具体的な事実を集め、企画を磨いていきました。

要点:企画の精度を上げるとは、資料をきれいにすることではなく、周囲を動かす力を高めることです。

最終発表の日

迎えた最終発表。4チームは、それぞれ趣の異なる新規事業を立案しました。

  • グローバル探究学習
  • 思い出の地をめぐる旅
  • 欧州ネットワークの循環型戦略
  • ペット同伴ツアー

正直なところ、役員は新規事業の提案に大きな期待はしていなかったといいます。ところが4チームとも、非常によく考えられ、リアリティがあり、「実際にやってみたい」と思える内容でした。

評価は、その場の議論にも表れました。社長からは、半分冗談・半分本気でこんな声が挙がりました。

これ、子会社を作るとしたら誰が社長になるんだ?

さらに議論は、「このビジネスをやるなら、足りないリソースは他社を買収して始めようか」「買収するならこの企業で、これくらいの金額でいけそうだ」と、具体的な事業の話にまで発展しました。

研修の成果物が、本気の経営判断のテーブルに乗った瞬間でした。

起きた変化

ただ、企画以上に大きかったのは、受講生本人たちの変化です。

発表にない質問にも、的確に答えられる。それは、数ヶ月かけて企画を作り込んできた深みがあったからこそです。役員の前でも臆することなく、堂々と自分たちの主張を伝える姿は、頼もしさを感じさせるものでした。

プログラム前9ヶ月後
仕事への向き合い方既存業務を高精度で回す正解のない問いに、自分たちで事業を描く
新しいことへの姿勢踏み出す力が弱い顧客に会いに行き、事実を集めて企画を磨く
経営層との関わり—役員の前で、堂々と自分たちの主張を伝える

変化は、主観だけではありません。事務局によれば、研修前後のアセスメントで、受講生全員のリーダーシップに関する能力が向上していました。

既存に最適化されていた優秀な人材が、自ら踏み出す変革の担い手へ。それが、この9ヶ月の成果です。

こんな課題を持つ企業に効く育成です

  • 既存業務は優秀にこなすが、新しいことに踏み出せる人が少ない
  • 業界の変化が激しく、変革を担う次世代人材が必要
  • 研修を「知識のインプット」で終わらせず、行動と成果につなげたい
  • 現場から新規事業や挑戦の提案が上がってくる組織にしたい
  • 経営と現場をつなぎ、自走できるリーダーを増やしたい

当てはまる項目が多いほど、実践を通じたリーダーシップ開発が効くサインです。

まとめ

  • 既存業務に最適化された優秀な人材ほど、変革に踏み出す力が弱くなりやすい
  • リーダーシップは能力であり、獲得できる。座学ではなく新規事業立案という実践の中で身につける
  • 前半は分析で勝ち筋を描き、後半は1on1での自分ごと化と、フィールドワークで企画を本物にする
  • 最終発表では社長が事業化を本気で議論し、アセスメントでは全員のリーダーシップ能力が向上した
次回予告:なぜ、ここまで育ったのか。次回の記事では「受講生がここまで育った理由」を解剖し、その原理を日常のマネジメントに応用する方法を解説します。

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