メンバーマネジメントの全体像|目標設定から達成支援までの流れ

メンバーマネジメントにおける上司の仕事は、突き詰めると2つ。①経営戦略と紐づいた目標を部下に設定すること、②その目標を達成させること、のみです。
この2つが回ると、目標を達成することによって経営目標の達成に近づき、部下自身は高い評価を得て、報酬が上がり、等級が上がり、より高い仕事ができるようになるため、組織が成長します。目標管理制度を「評価のため」のみではなく、「組織の成長エンジン」として活用することが重要です。
この記事で分かること
- 目標管理制度を組織の成長エンジンとして活用する方法
- 部下に目標を達成させるための考え方
- 目標達成を支援する上司の介入ポイント
そもそもメンバーマネジメントとは、何をすることか?
「部下育成」「メンバーマネジメント」と聞くと、「やることが多すぎて何から手をつければいいか分からない、という声をよくいただきます。ですが、突き詰めると上司の仕事は、「①目標を設定すること」と「②目標を達成させること」の2つに集約されます。これが理解いただけると、「何につまづいているのか」「どんな打ち手を打てば良いのか」がクリアに整理できます。
全体像を1枚にすると、こうなります。
左側が戦略の流れ、右側が人事制度です。この2つは別々のものに見えますが、個人目標という一点でつながっています。
なぜ目標設定が、上司の仕事の中心なのか?
部下の目標は、主観や思いつきで決めるものではありません。会社の戦略が段階的に落とし込まれた結果として決まります。
経営戦略が個人目標になるまで
三層構造の組織であれば、課長は02と03の間に立ちます。部門目標を受け取り、課として何を達成するかを決め、それをメンバーに配る役割です。
この順番でつながっていれば、個人目標が達成されれば課の目標が達成され、部門目標が達成され、最終的に経営目標が達成されるという構造になります。
逆に言うと、ここがつながっていない目標は、どれだけ頑張って達成しても組織の成果になりません。目標設定が上司の仕事の中心にあるのは、このためです。
目標を達成すると、何が起きるか?
目標が達成されると、組織と個人の両方に変化が起きます。これが一周して、次の成長につながります。
達成が成長に変わるループ
ここまで見ると、目標管理制度の位置づけが変わって見えるはずです。
目標管理制度は、評価をつけるためのツールではありません。組織を成長させるためのエンジンです。
上から降りてきた目標を個人目標に組み込み、達成すれば組織の目標が達成され、本人の評価・報酬・等級も上がる。等級が上がればより高い目標を設定でき、さらに大きな仕事を任せられる。この循環を回すための仕組みです。
評価者である上司は、「部下をジャッジする人」ではなく「部下を成功させて良い評価を取らせる支援者」である必要があります。
達成支援は、どう進めればよいか?
目標が決まったら、あとは部下が自分でPDCAを回して達成してくれれば理想です。しかし、そう簡単にはいきません。ここで上司の介入が必要になります。
使うのはGPDCAサイクルです。ゴールを決めてからPDCAを回すという考え方です。
このサイクルの各段階に、上司の介入ポイントがあります。
| 段階 | 部下がやること | 上司の介入 |
|---|---|---|
| G 目標 | 経営戦略と紐づいた目標を持つ | 目標設定の支援 |
| P 計画 | 中間目標と行動計画に分解する | 落とし込みの支援 |
| D 実行 | 計画に沿って進める | 報連相などで適宜対応 |
| C 確認 | 進捗を確認し、課題を出す | 定例会議の設定 |
| A 改善 | 施策を実行する | 人材育成、または仕組み構築 |
目標設定を支援する
部下が自分で目標を書けるとは限りません。特に、戦略とのつながりは本人には見えにくい部分です。なぜこの目標なのか、これが達成されると組織にとって何が起きるのかを、上司が言葉にして渡します。
計画への落とし込みを支援する
目標が決まっても、それだけでは動けません。年間目標を、半期・四半期・月・週へとマイルストーンに分解します。
この粒度は、部下の習熟度に合わせて変えます。経験の浅い部下には月単位まで、自走できる部下には四半期単位まで、といった調整です。
実行中は、報連相で拾う
実行フェーズで上司がやることは、部下が停滞しないように拾うことです。ただし「困ったら相談して」では機能しません。上司が欲しい情報と、部下が上げるべきだと思う情報がずれるからです。
報連相はルールにします。考え方は3つあります。
- 状況で区切る:「5分考えて答えが出なかったら」「ここを調べて、それでも分からなかったら」
- 状態で区切る:資料なら、全体像が見えた2割の段階で一度見せてもらう
- 時間で区切る:「1時間後に10分取って、どこまでできたかを教えて」
定期的に確認する場をつくる
確認は、会議体として設定します。ここで見るのは「やったこと」ではなく着地予測です。
「今週これをやりました」という報告だけでは、期日どおりに着地するかが分かりません。「ここに着地するためにはこれが必要で、今は80%まで進んでいる」という形で報告してもらいます。
もっと軽くするなら、進捗を青・黄・赤の3色で報告してもらう方法もあります。黄色や赤が出たときだけ話を聞けば、手間をかけずに危ない案件を拾えます。
改善策は、育成か仕組みで打つ
課題が見えたら、施策を打ちます。打ち手は大きく2つです。
1つは人材育成。本人のスキルが足りないなら、教えて、できるようにします。具体的な手順はティーチングの5ステップで解説しています。
もう1つは仕組み構築。個人の能力の問題ではなく、やり方や段取りに原因があるなら、仕組みのほうを変えます。同じ課題が複数のメンバーで起きているなら、ほぼ後者です。
1on1は、この流れのどこで効くのですか?
GPDCAを円滑に回すために、サイクルの中心に置くのが1on1です。
会議では進捗という事実が分かりますが、本人が何に詰まっているのか、何を課題だと感じているのかまでは見えません。ここを拾うのが1on1の役割です。
つまり、コミュニケーションの手段は役割で分かれています。
| 手段 | 拾うもの |
|---|---|
| 報連相 | 日々の進み具合と、その場で起きている問題 |
| 定例会議 | 計画に対する進捗と、抽出された課題 |
| 1on1 | 本人がどこで止まっているか、何を課題と感じているか |
1on1の具体的な進め方は1on1改革の実践事例にまとめています。
よくある失敗は?
目標設定を本人任せにする
「自分で考えさせたほうが主体性が育つ」という理由で、目標を本人に書かせて終わるパターンです。
主体性は大事ですが、戦略とのつながりは本人には見えません。結果として、頑張れば達成できるが組織の成果にはつながらない目標ができあがります。何のための目標かは、上司が渡します。
意図的な介入をせずに「放置」する
「部下の主体性を尊重する」というお題目のもとで、実質は何も介入せずに部下を放置しているケースです。放置していて主体性が育つのはごく少数です。
部下の特性や習熟度を見極めながら。意図的な介入によって自走を支援する必要があります。
上司が自分でPDCAを回してしまう
逆に、上司が全てに介入してしまうケースです。部下が停滞しているのを見かねて、上司が代わりに計画を引き直し、代わりに手を打ってしまう。
その案件は前に進みますが、本人はいつまでも自立しません。次も同じところで止まります。
上司の立ち位置は、サイクルの中ではなく外です。少し俯瞰して、どこで滞っているのか、どう介入すれば本人のサイクルが流れ出すのかを見る。回すのはあくまで本人で、上司がやるのは詰まりを取ることです。
まとめ
- 上司の仕事は、経営戦略と紐づいた目標を設定することと、その達成を支援することの2つです
- 目標管理制度は評価ツールではなく、人と組織を育てる成長エンジンです
- 達成支援は、GPDCAの各段階に意図的に介入する形で行います
- 報連相・定例会議・1on1は役割が違います。使い分けて、部下が自分でサイクルを回せるようにします
自分の関わり方をチェックする
- 部下の目標が、課・部門・全社の目標とつながっていると説明できるか
- 年間目標を、月や週のレベルまで分解できているか
- 報連相を「困ったら言って」ではなく、ルールとして決めているか
- 進捗報告が「やったこと」ではなく「着地予測」になっているか
- 自分がサイクルを回してしまっていないか。回しているのは本人か



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